ガリード、そしてハートマンと、パナマから今期入荷したトラディショナル品種を紹介してきました。
前回ちょっとお話しましたが、「コーヒーらしいコーヒー」といえば、私の勝手なイメージですが、いくつかの農園が思い浮かびます。
その二大巨頭、その名の通り「ドン」のつくお二方です。
ドン・ベンジー、農園主ステファン・ミューラー氏はとても生真面目な印象の方で、コーヒーも質実剛健なイメージ、華やかなフレーバーがありながらボディの部分もしっかり出すことで、その絶妙なバランスと奥行きを楽しめる素晴らしいコーヒーづくりをしています。
標高はさほど高くないボケテの渓谷沿いにある森で、静かにゆっくりと熟成されたチェリーは、濃密でふくよかな味とアロマを醸し出します。そのポテンシャルをまんべんなく引き出すよう、あえて簡潔に表現すれば、あくまで「コーヒーらしい」仕上げにこだわっているような印象です。
ある意味、ゲイシャコーヒー本来の深い味わいを知っていただくには、おススメかもしれません。
そして、ドン・パチです。
先代のフランシスコ・セラシンが、初めてパナマにゲイシャを導入したと言われ、まさにパナマコーヒーの父「ドン」のような存在として、日本でもおなじみの農園です。
現在はその息子さん、フランシスコ・セラシン氏が農園を経営しておられます。安定感のある、いかにも「農園主」といった風貌のセラシン氏。
そういえば昨年、パナマの農園主たちに協力してもらい、日本の皆さんに向けた応援メッセージを各農園主から送ってもらったことがありました。(TOPページhttps://www.brisatrade.com/ に掲載しています)
各農園主によって撮り方はさまざまで、だいたい皆さん、手持ちのスマホでチャチャっ(と言っては失礼ですが)と撮ったものを送ってくれたのですが、その中で、ドン・パチのセラシンさんだけ、なかなかアっと言わせるものを送ってくれたのを思い出します。
しっかり固定カメラ(と思われる)を前に、あたかも役づくりを万端整えたように、用意したニホンゴをよどみなく発音し、しかも、農園ロゴ付きの、ばっちり映像編集されたものでした。彼のおおらかなサービス精神に、目頭のアツくなる思いでした。
また世界的にいわゆる「ステイホーム」が始まったあの時期、氏はかなり積極的にインスタライブを発信していて、海外の様々な関係者と頻繁に(まったり)対談などをやっていました。
今となってはわりと当たり前になっていますが、あの当時、いながらにして農園主の話が聞けるとあって、私もなるべく視聴するようにしていました。
ある対談の中で氏が、おいしいコーヒーの4つの要素について説明していたのを、よく思い出します。
氏によると、おいしいコーヒーに必要なのは4つの要素で、それは「甘さ(dulce)、酸味(cítrico)、ボディ(cuerpo)、苦み(amargo)」だそうです。
そして、どれかの要素が少なかったり、あるいは、多かったりではなく、つまり、その4つの絶妙な調和、バランスをつくりだすために、チェリーの栽培から、プロセスに至るまで、「逆算して」コーヒーづくりをしているのだそうです。
「すべて」の要素が、しかも初めの一口からそのバランスを感じさせ、さらに時間とともに、色々にアロマとフレーバーが変化していく。
あまたあるパナマコーヒーの品種はすべて、パナマゲイシャの最上ロットに至るまで、この「バランス」と「まろやかさ」こそが基本です。
まるで上質のワインのように、コーヒーチェリー本来の味を、ゆっくり時間をかけて楽しむ、それがパナマコーヒーの醍醐味です。
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